いじめ自殺(7)〜教室の悪魔〜

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去年出版された本ですが、内容に驚きました。
現在の小学生中学生の間で起こっているいじめ問題に対して、かなり深く切り込んだ内容でした。

携帯電話、メールなどの新たな電子ツールが用いられ、いじめも2000年代に入って多様化してきているらしい。
これを読むと、いじめの手段が多彩になっていることがわかります。
また、一時的な家への避難、或いは他の施設への避難なども渦中に巻き込まれている人に対してかなり難しい。
何よりも、まず周囲(学校、親など)が気づくことが難しいということが再確認されました。
いじめに対しての厳罰化が招くさらなるいじめの隠蔽は今後より深刻になると思われます。
今週は、福岡のいじめ自殺で生徒から逮捕者がでました。
無論、いじめた側はしかるべき処罰を受けねばなりません。ですが、いじめは学級全体で行われることが最近の傾向でしょう。
どこまで処罰の対象を広げるのか。これが今後の最も重要な課題となるはずです。
なによりも問題なのは、周囲がいじめがあった事を認識した時点で事態は相当深刻な域に達していると言うことです。

担任がどうして気づかなかったのかというよりも、私は、その巧妙さに驚いていた。
何かひとつのものを壊したら、しばらく、ものは壊さない。怪我をさせたらしばらくは怪我をさせない。学校の内部で起こっていることは子どもが言わなければ、親は知り得ない。
教室の悪魔 p41より参照


ある日、突然何の前触れもなく自殺する、この認識は間違っています。たぶん正確には自殺したかのように見えているだけなのでしょう。本人は、そこまで誰にも言えず、だからこそ最後の手段に打って出るしかないのではないか。特に、暴力などでのいじめは親や学校側も気づくことができるでしょうが、メールを使った誹謗中傷、或いは無視などの見えない暴力は周囲に認知されない上に、本人の心へのダメージも計りしれません。
いじめられている本人が、いじめを周囲の大人に知られまいと隠してしまっているケースがあるのだから、より一層見えなくなるはずです。
いじめが見えなくなった中で、またクラス全体が共犯者に成りえる状況の中での学校側が取るべき対応も限られてくるはずです。
それはつまり、いじめが起こってしまった後の対応策を考えなければならないと云うことでしょう。
というのは、ある日突発的に起こるいじめ現象に対して、何らかの対応策を事前に打ち出すことは不可能に近いからです。
だから学校側が考えるべき事は、いじめが起こった後の生徒のケアなり、被害家族への保障などを考えた方がよっぽど現実的だということになります。
いじめをなくそうという理想論は早く捨て去らなければなりません。そして何よりも現実問題としてなにが今できるのか、これを考えなければ今後も誰一人として救えないでしょう。

参考
山脇由貴子 教室の悪魔 ポプラ社